自転車で酒気帯び運転をした場合、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が2024年11月より科せられるようになりました。
しかし、自転車の飲酒運転が摘発されたとのニュースが後を絶ちません。
実際のところ、車で酒気帯び運転すれば捕まるのは知っていても、自転車でも捕まるのを知らない方は多いのではないでしょうか。
特に、金沢市は車社会なので、お酒を飲む年齢になると自転車のことなど他人事になってしまいがち。
また、自転車の酒気帯び運転が検挙対象になったのは、2024年11月からと最近であり、自転車に乗らないだろう冬を挟んでいることもあって、余計に周知されていないのかもしれません。
事実、石川県は人口比で日本で2番目に自転車飲酒運転の摘発件数が多いというデータもあります。
今回、金沢市内で飲酒後に自転車を運転して検挙されたというHさんより、その後の顛末を体験談として取材させていただいた内容を以下にご紹介します。
金沢市内で自転車の酒気帯び運転で検挙された体験談
検挙されて初めて法改正のことを知らされた
ビールのロング缶を3缶ほど飲んだ後、それほど人気のない大通りを自転車で走っていた際、急にUターンして追ってきたパトカーに停止を求められ、その指示に従いました。
てっきり、防犯登録のチェックかと思っていたところ、息を吐いてと言われ、呼気検査しますのでパトカーに乗って、とのこと。
自転車の酒気帯び運転も捕まるようになったことを知らず、まったく酔っていなかった私は「いいですよ。どうぞ好きなだけ調べてください。」と車内へ。
渡された袋に息を吹き込み、所定の時間を経て1.5以上の数値であれば違反と説明を受け、言われた通りにやってみると、数値は1.7くらいとなり、警察官から「酒気帯びの違反です」と告げられました。
“車じゃあるまいし、この警察官は何を言っているんだ?”と心底思っていた私は、「あの~、自転車なんですけど?」と確認してみると、「去年の11月から自転車も検挙対象です。」とのお言葉。
このタイミングで、自転車の酒気帯び運転についての説明を受け、罰則が設けられたらしいことについても初めて知ることになりました。
「後日、検察から連絡があると思うので従ってください」と言われ、その場で赤切符を渡されることもなく、双方とも和やかな雰囲気で取り調べ終了。
“酔ってないことがわかってもらえたのかな。いったい、何だったんだ?”と、自宅に帰ってから詳しく調べてみると、全体像をしっかり把握することができました。
頭を抱えることになったのは言うまでもありません。
起訴?不起訴?検察の対応
検察から連絡がある“と思う”、と言われても、連絡がない場合もあるのでしょうから、対応のしようがありません。
結局、それから1ヶ月半ほど後、検察から封筒が届き、1週間後に来てください、との呼び出し。
検察は起訴・不起訴を判断する場所とのことであり、しっかりと反省している姿勢を伝えれば不起訴にもなり得るとネットで見かけました。
ところが、反省の弁を述べる機会などありませんでした。
面談時には起訴を決めていたようであり、略式にするかどうかの話がメインでした。
いくらか質問してみたところ、検察官の回答はすべて4輪基準の内容であり、あまり参考にならず。
この点について伺ってみると、「まだ前例が少なく、自転車も車輌であることから、このような回答になります。」とのこと。
さらに面倒にする必要などないので、そのまま略式に同意。
「2週間後くらいに簡易裁判所から特別送達で判決が届いた後、1週間ほどで検察から罰金の納付書が届きます。その内容に沿って罰金を支払ったら、この件はすべて終了です。」と説明を受け、検察での聴取は終了。
時間は30分もかかりませんでした。
自転車の酒気帯び運転の罰金が通知される
実際に簡易裁判所から判決が届いたのは、検察に呼び出された日から1カ月ほど後。
特別送達といっても、そんな仰々しいものではなく、小さな封筒に2枚ほどの紙が入っているだけ。
うち1枚の紙は、当日の赤切符。そこに罰金額が印字されていました。
こちらに罰金額が印字されていました。
罰金は10万円。
払えないときには1日5,000円換算で労役所にて働け、とも付記されています。
検察から罰金の納付書が届いたのは、検察官から聞いていたとおり、その1週間後。
支払い用紙を作成した日から1週間以内に入金するよう支払い期限が決められていたようで、封を開けた日から支払い期限までは5日。
しかも、銀行や郵便局の窓口に行かなくてはならないため、土曜日に開封したタイミング上、翌週の月曜~水曜のうちに都合を付けなくてはなりません。
取り急ぎ、週明けに罰金を支払い終えて、すべてが終わりました。
とにかく面倒ばかりなので、飲んだ後に自転車に乗ろうとは二度と思いません。
高い授業料も払う羽目になりましたが、良い勉強の機会にもなりました。
皆さんも、飲酒運転については自転車も車と同じ取り扱いであると認識をアップデートすることをおススメします。
自転車酒気帯び違反内容と罰則のまとめ
初犯
検出アルコール量:1.7
↓
罰金10万円
自動車免許には影響なし
実名報道なし
編集後記
半年前まで捕まらなかったことなのに、知らないうちに捕まるようになり、実際に捕まったので、Hさんも正直モヤモヤするところはあるとのこと。
捕まると知っていれば、飲んだ後に自転車に乗っていなかったはず、というのが理由。
しかし、調べてみると、以前から自転車の飲酒運転は禁止されており、罰則がなかっただけのようです。
よって、知っていたかどうかは問題ではなく、飲んだ後に自転車に乗ったという行為が成立しているので、検察も起訴ありきの対応だったのかもしれません。
これを裏返すと、よく見聞きする“アルコールは抜けていると思った”という主張は、飲んだ後に自転車に乗ったという行為が成立しないようにするための主張なのでしょう。
兎にも角にも、お酒を飲んで自転車に乗ると捕まり、高額な罰金を支払うことになります。
Hさんの場合には10万円でしたが、20万円の事例もあるようですし、自動車免許停止が付加されることもあるようです。
“自分だけは大丈夫”と考えるのは言語道断。
今回、取材したHさん曰く、警察官の発言から、パトカーは無作為に自転車を止めている印象を持った、とのこと。
「顔が赤いように見えたから声をかけさせてもらいました」と、22時過ぎに言われたようです。
確かに、その時間帯に顔色なんてわからないですよね。
ランダムに自転車をチェックするくらい、石川県警は取り締まりを強化しているのですから、“自分だけは大丈夫”であるはずはありません。
若干の寂しさもありますが、自転車で片町へ行って飲んで帰る、というのは、もうできない時代になってしまいました。