県外からお客さんをお迎えした際、「何を食べたい?」と聞いてみれば、きっと「ノドグロが食べたい!」という答えが多くなると思います。
金沢にずっと住んでいれば、ノドグロは身近な魚であり、スーパーで売られているのも珍しくありませんので、なぜ県外の人がそれほどノドグロを食べたがるのか不思議に思うかもしれません。
近年になってからノドグロの人気に火が付いたきっかけは、テニスプレーヤーの錦織圭が“ノドグロ食べたい!”と2014年に発言したからです。
ノドグロは白身のトロと呼ばれるよう、脂がよく乗っていながらクセもなく、刺身でも寿司でも、煮ても焼いても、すべてにおいて最上級の味わいをもたらしてくれる魚です。
ノドグロの脂は皮と身のあいだにもたっぷりとついていることから、皮をひかずに炙って食べると更に旨味が増すといわれており、それを証するかのようにノドグロの塩焼きは絶対的な人気を誇っています。
ノドグロの正式名称はアカムツであり、島根や長崎、石川といった日本海側の産地において、アカムツをノドグロと呼んでいるとのことです。
その理由が、ノドが黒いからというのも、産地ならではの呼称由来だと納得させられます。
金沢といえばノドグロといわれる理由
実際、ノドグロは石川県近海でしか獲れないわけではなく、長崎県や島根県、新潟県や徳島県もノドグロの産地として有名であり、特に長崎県は“紅瞳”、島根県は“どんちっちのどぐろ”と、ノドグロのブランド化をしています。
上記のよう、ノドグロのプロモーションについて石川県は長崎県や島根県のように力を入れているわけでもないのに、なぜ“金沢とノドグロ”が結び付けられるようになったのかといえば、やはり日本有数の観光地だからこそ、金沢でノドグロを食す人の数が他の産地に比べて多いからといえるでしょう。
ちょっとした日本語の違いですが、“金沢といえばノドグロ”であり、“ノドグロといえば金沢”ではないのです。
つまり、“ノドグロを食べたいから金沢に行く”、のではなく、“金沢に行ったからノドグロを食べたい”、となるのです。
そして、美食の街かなざわの料理人の技術と獲れたてのノドグロが相まって、それらの期待を上回る味わいを提供しているから、“金沢でノドグロを食べるべき”という価値観が広まっていくのでしょう。
最近はインスタをはじめとするSNSの台頭によって、どのような料理においても見た目がより重要となってきています。
この点においても、金沢の料理人が作るノドグロ料理であれば優位性あるものを提供できるだろうことより、先々も“金沢といえばノドグロ”という価値観は確かなものとなっていくでしょう。